漣(さざなみ)農業日記

農業によせるさざなみから自分を考える

今押し寄せる波は、さざなみなのだろうか、荒波なのだろうか。

安全・安心な農業

 現在、有機農業に農政の関心が集まっている。農林水産省の目標は、2050年までに、耕地面積に占める有機農業の取組面積の割合を25%(100万ha)へ拡大するということだ。

「安全・安心な農業」・・・では農家にとってこの課題はどう生まれてきたのか。たぶん農家は、農薬・化学肥料を使って市場が必要な時に、必要なレベルの生産物を、必要なだけ生産することに頭を使ってきた。でも市場出荷だけに頼っていては、農家自身がめざす目標に届かない。直接消費者に届けることが、これについての一つの突破口になると考えた農業者が、当時各地に育ってきた生協などの消費者組織をターゲットにして産直を開始した。消費者と直接向き合うことで、「安全・安心な農業」という課題が先方から投げられたのである。その時になって、はじめて農業者は、実はこの課題は農業者にこそ必要な課題であったと気が付いたのだと思う。

 農薬・化学肥料を使用しない農業がはたしてできるのか。このことを自分たちの課題として意識した農業者の闘いがそこからスタートした。そして、彼らの血のにじむような努力の結果が、現時点での有機農業の評価をつくってきたといえる。

 安全・安心な農業に「個人で取り組むある農業者」は、人的な信頼関係があれば、公的な保証は不要であるという観点から有機認証は受けていないという。長い間に受け手である消費者組織を構築し、その信頼関係を基本にした実践を行っているケースである。「グループで取り組む場合」でも、消費者との関係が固定的な場合には、安全な生産を基本にすることで、農産物の質や量の問題については、互いの信頼により乗り越えることができる。

 しかし、生協などと契約している「産直組織」では、どうしてもめざす生産を実現する「仕組み」を作っていかなければならない。現在の内容は未確認だが、船橋農産物供給センターでは次のような仕組みを作っていた。センターとしての農薬使用基準(当時は低農薬栽培といった)も別にさだめ、栽培管理目安表に記載してある。

 組合員は、毎年10月に自分が生産する全圃場の翌年の生産計画をセンターに出荷しないものを含めて、畑1筆ごとに提出し、センターに出荷できる品目を「出荷計画表」として提出する。11月にセンターと年間の供給契約を結び、センターは農家の出荷計画表と生協との契約量を調整しながら組合員との契約量を決定する。センターは、品目別会議(販売計画にのせた農家は参加が義務づけられている)を召集して、その年のその品目・作型の「栽培管理目安表」を作成、決定し、生産者はそれを基本として具体的生産計画をたてる。(メモリー普及活動レポートより)

 私は、このような組織としての取り組みの充実が「安全・安心な農業」を不断に進めていくと思っている。でないと世代交代の問題を克服できないだろう。