漣(さざなみ)農業日記

農業によせるさざなみから自分を考える

今押し寄せる波は、さざなみなのだろうか、荒波なのだろうか。

体験農園の実際を見学 (清水菜々園・・ほがらか塾)

 体験農園の売りは「農業生産を体験すること」「生産した農産物を味わえること」ですが、さらなる売りは「農業のプロにサポートしてもらえる」ということでしょう。
農業者の側から言うと、自分のサポートによりきれいに農地を保全できるということと、消費者との交流により経営に対して新しいヒントが得られるということになるでしょうか。

 体験農園「清水菜々園ほがらか塾」の講習会におじゃましました。彼は週末に同じ内容の講習会を3日間行っています。今日は、「ほうれん草・小松菜・小かぶ・二十日大根の種まき」です。
開始時間前に行くと、園主(清水さん)は、利用者が使う資材を点検、準備しており、訪れた利用者の中には、事前に印刷された資料やホワイトボードに書かれている講習内容を読み、必要な準備を個々に始めている人も見られました。10時きっかり講習会スタート。私の周りを見ると約20名程度の人が椅子に座っています。

「はじめに割り箸を利用して、となりの人との境界を決めます。」
「次に用意した石灰(白色)と肥料(茶色)を鍬で混ぜます。これは境界を多少はみ出してもかまいません。」
「次に平畝をつくります。これは毎回やる基本の作業です。畝の外側の土を内側に掘りあげ、5〜10㎝の高畝を作ります。真ん中に雨がたまらないように平らにします。」
「平らにしたらこの板で鎮圧し、12㎝間隔で播き溝を作り、種をまいたあと土をかけてさらに鎮圧します。これにより水分が上がり、種は発芽しやすくなります。」
「溝の深さは種子の厚みの3倍といいますが、あまり深いと発芽しにくいです。」

座学講習後に圃場へ

 作業手順にしたがって、資料の流れに添い説明し、さらに必要なことはホワイトボードに書いてあります。作業の持つ意味は、講義を聞かないとわかりません。
 話は小松菜に多いシラサビ病やホウレンソウのべと病の予防にうつり、農薬についての説明も行ないました。そのあと、「シラサビ病は食べても人間に害はありませんが、病気になったものは市場にはだせません」と説明し、「シラサビがあっても気にならない人はまかなくてもいいです。」という説明が続きました。サンサンネットを掛けるところまで、一連の説明が続きます。

 説明が終わった後は、現場に出て、実際に順序通りにやって見せます。農作業は組み作業により確実に効率が上がります。外の作業では、奥さんと息の合った作業ぶりがみられました。講習会が始まって約40分で終了しました。

 農業者は農業のプロであり、毎日ずっと農作業をしていますが、一つ一つの作業の意味を考え組み立て、それを人に説明するということはとてもむずかしいことです。私はこの40分間の講習のために、清水さんがさまざまな工夫をされていることを実感しました。
 まず第一に栽培の手順が一目でわかる資料を作る。第二に作業の意味や内容については、ホワイトボードを使いながら、座学の講習の中で説明する。利用者は、必要に応じて資料に書き入れます。そして第三に実際に圃場でやってみせる。
 講習の進め方の3ステップの組み合わせはじつに見事なものでした。

 講習の中で彼は「ホントは水はやらなくても大丈夫。でも水をやりたい皆さんの気持ちもわかります。」といって、播種、覆土、鎮圧後に水をかけていましたが、相手の気持ちをくみながら、上手に教え、「発芽すれば水はやる必要ないですよ。」と付け加えました。
 体験農園は、利用者に預けっぱなしの農園ではありません。常に自らにも責任がついてまわる農園ともいえます。しかし、そういう中で、利用者との交流はより深まり、この講習のための準備は非常に手間がかかりますが、自らの技術自体も高めるのだということを実感した時間でした。