漣(さざなみ)農業日記

農業によせるさざなみから自分を考える

今押し寄せる波は、さざなみなのだろうか、荒波なのだろうか。

農業における公務員の兼業について

 農業では深刻な人手不足が続いているが、最近、この解決策の一つとして「公務員の兼業」ということがクローズアップされている。NHKのニュースだったと思うが、弘前のリンゴ農家で、市役所の職員が農作業に従事している姿も放映された。

 もともと農業は季節的な作業のため、農閑期と農繁期があるのが普通である。私が普及員として働いていた時ある先輩から、「日常作業は家族で行い、農繁期だけ臨時で人を雇える形ができれば、農業はもっと規模拡大できる」という話を聞き、私はなるほどそうだと得心がいった覚えがある。また、そのころ通年収穫の施設園芸農家では、近隣の主婦にターゲットを絞り、相手の生活に合わせた雇用形態を模索し、「あなたの都合でいつ来てもいい」という条件を提示して、必要な労働力を確保していた。農閑期、農繁期がほとんどない部門(施設園芸や畜産)ではこのような対応をすることで、通年雇用も可能となる。しかし、一般の稲作や果樹などではそうはいかない。かなり昔のことだが、通年雇用のために、大規模稲作農家がホウレンソウのハウスを建て、農閑期にはそこで働いてもらうということを行っていたのを思い出す。

 さて、この人手不足解消を狙った公務員の援農について、「人手不足の生産農家で公務員が兼業することについてのアンケート」を日本農業新聞が行った。公務員、農家など職業を問わず200人の方に聞いた結果では、賛成89%、反対6%、どちらともいえない5%だった。自由意見も聴取したので目に留まった意見を紹介しよう。

賛成の方「外国からの技能実習生はいつまで日本を選ぶでしょうか。」
反対の方「農家といえども一企業。課題解決は自らすべきだ。行政に頼るべきではない。」

 農業は一つの企業だという点については間違いないところだ。しかし、儲けだけを目標に経営活動を成り立たせようとすれば、私たちが希望する「安全・安心な食料」や「生きるためのステキな環境」を手に入れることはできないだろう。
 家族を中心とした農業は私たちに多くの重要な価値を与えてくれるという気がしてならない。この経営を成り立たせるための仕組みを、農業者の努力にプラスして、公的な職業に従事する人たちが一定の社会的価値を感じることが出来るような形に、変えていくべきではないか、アンケート結果と意見を見て、私はそう感じている。