漣(さざなみ)農業日記

農業によせるさざなみから自分を考える

今押し寄せる波は、さざなみなのだろうか、荒波なのだろうか。

農産物コストの発信

 物価の優等生ともてはやされてきた鶏卵でさえ小売りで300円を超え今までの2倍近く上昇してきている。これは鳥インフルエンザによる殺処分で、鶏の羽数自体が大幅に減少していることと、コストの主要部分を占めている飼料価格の上昇が影響している。

 今、農業経営全体が今までになくピンチに陥っているが、その原因は、農産物を生産する直接的な経費が想像以上に増してきているからだ。生産コストが上昇した場合、その経営を続けていくために経営者は普通、価格に転嫁せざるを得ない。しかし、農産物の場合、国民生活に必須なもののため、上昇分を価格に十分反映させることは難しい。こうして農業経営を維持させることが困難になれば、農業者自体が減少していく。せっかく国内自給できているものさえ、外国からの輸入に頼らざるを得なくなるだろう。

 一般企業においては、バブルの時代を思わせる好景気が到来し、今までにない利益を実現し、労働者の賃金の上昇も顕著になりつつある。現在、農業経営が苦境に陥っていることを、消費者は本当に理解しているのだろうか。

 農産物生産が安定的に行われるためには、消費者に現在の農業の姿を本当にわかってもらう努力を農業者は不断にしなければならないだろう。今、最低何をすべきか。私は、各産地で協力して生産する農産物のコストを求め、コストが農産物価格と比較してどういう位置づけになるのか、消費者に対して明示する地道な運動を展開してもらいたいと思っている。つまり各農産物の損益分岐点の明示である。

 損益分岐点を計算し、現在の売上高と比較して、損益分岐点比率(=損益分岐点売上高/実際の売上高×100) を求める。この比率が低いほど経営は安定している。販売単価の変動が激しい農産物では、年間1割程度の平均単価の下落は容易に予測される。したがって、損益分岐点比率が90%であれば、決して安心できない状況であると判断できる。目標利益高を確保した損益分岐点売上高の確保が重要であるので、家族経営であれば、必要家計費を固定費に算入して修正計算した損益分岐点売上高が目標となる。(メモリー普及活動レポートより)

 上の内容は、農業者が自己経営の改善のために損益分岐点の利用について示したものだが、今農業者が行わなければならないのは、消費者に向けての発信である。産地品目別に損益分岐点を求め、コストも主要科目別に整理し、それにより、消費者は品目別に、現状の農産物価格を判断でき、その原因についても理解できる。

 このままでは、国内生産が危ない。現場の普及サポートに期待する。