漣(さざなみ)農業日記

農業によせるさざなみから自分を考える

今押し寄せる波は、さざなみなのだろうか、荒波なのだろうか。

現ナマの動き

 農業を経営として考えていく場合、家族経営であるという点が、一般の企業経営と大きく違う点です。通常企業は経営状況が悪化した場合は、企業の構成員(株主)や銀行などから資金調達をして乗り切り、経営が好転した時期に調達した資金を返済するという形をとります。これには必ず説明責任が伴うでしょう。

 一方、家族経営の場合は、もちろん他からの資金調達も行いますが、その策を使う前に、例えば家族の生活を切り詰めたりして(今までの貯蓄を切り崩して)、これを乗り切るということをやっていきます。家族への説明は行いますが、説明に法的な責任はともないません。この経営の形が今まで継続してきていることが、「農家はつぶれない」と昔から言われている要因でしょう。

 農業経営は家族経営が主なので、複数の収入源と複数の支出源があるのが普通である。特に家計経済との分離ができていないことから、経営内のお金の動きをすべて明らかにすることはできない。農家経営にとって必要な資金は、農業所得と農外所得の双方から供給される。農業所得は、収益と経費の差である利益と家族員の専従者給与とから成り立っている。
 一方家計支出は、所得から共通家計費と必要なローンを支払い余剰が出れば、貯金をして蓄積される。このような形で資金の回転がすすめば、経営内及び家計内の資金蓄積はうまくすすめられていく。
 しかし、ひとたび利益率が低下し、経営内の流動資産、とりわけ現預金が減少する中で、家計費が従前同様に消費されていくことで、経営(資金)問題が一挙に現実化してくる場合が多い。経営問題の原因の95%は家計にあるといっても過言ではない。従来は経営簿記と家計簿が同じテーブルで検討されることはほとんどなかったが、本来は密接な関連を持っているので、これを踏まえた管理を行う必要がある。(メモリー普及活動レポートより)

 農家の経営では、経営と家計の実態をとらえるのが不十分なだけでなく、実際のお金の動きがどうなっているのかについてもよくわかりません。例えば、経費には借入金の償還額は算入されないし、減価償却費といって実際に経営からでていかないのに費用化されるものもある。財布は一つですから、家計に使用された金もそこから減っていく。そういうことになると、例えば、一年間の経営活動をしたあと、純粋に農業経営から得た利益の割合はいくらなのか、減価償却費で補填されたものはいくらなのか、借入金によるものはいくらなのかというようなことをしっかりつかんでおかないと、知らないうちに経営が悪化するということもありうるわけです。

 農家に実践的な複式簿記を進めるのはこういうわけです。