漣(さざなみ)農業日記

農業によせるさざなみから自分を考える

今押し寄せる波は、さざなみなのだろうか、荒波なのだろうか。

まず生産を支えることに重点を!

    さて、前に経営を診断するには、規模と効率(生産性)に分解してみていくことが基本であるといいましたが、効率(生産性)はさらに技術と経済という2つの要素に分解してみていくことで、現在の状態になっている原因が、生産技術にあるのか、それをとりまく経済にあるのかを明確にできます。例えば一定の面積(例えば10a)から得られるコメの売り上げは、10a当りの収量(技術)×1俵当たりの米価(経済)というように分解できます。コストについても、例えば農薬代は、散布する量(技術)と単価(経済)に分解して考えることで、経営の改善ポイントが明確になります。

    生産性はさらに技術と経済に分解することで要因が明確化され、改善への具体的な対応へと結びつく。例えば、10a当りの生産額は、「生産量」×「単価」に分解する。「生産量」はおもに「技術」レベルに起因するものであり、「単価」は主に経済条件に起因するものである。この段階まで区分することで、はじめて経営での実際的対応手段を検討することができる。以上の手順で経営を分解してみると、その経営特有の課題と道筋が浮かび上がる。完璧なデータ収集が正確な診断の条件ではない。まず全体を見ることからスタートし、手順を追って考えることが重要である。(メモリー普及活動レポートより)

 米の価格が政策により決まっている時代では、農家は収量(技術)をいかに高めるかということに重点をおいてきました。現在では米価は変動しており、他の農産物も含め、技術と経済の両方に目配りする必要があります。また現在大きな問題になっている酪農の場合は、1頭の乳牛から産出される牛乳の量(技術)をできるだけ高め、1kgの牛乳の乳価からそれを生産するエサ代などのコストを差し引いた利益=差益(経済)を高くすること(1頭当たりの乳量 × 牛乳1kg当たりの差益)で、全体の所得が高まります。今までは、国内でエサを生産することは不経済で、外国からの安いエサを利用して、効率よく乳を搾ることに技術の重点が置かれていました。ともに「収量を高める」ことが、農家の所得を高めることと一致していました。農業全般に関して、経済の変化について考えると、それはある程度経営者の予測できる範囲内のことであり、自らの経営成果はある程度納得できるものだったともいえます。

 今になって国は、自給飼料の生産について言及し始めていますが、ことは急を要するのではないでしょうか。国民に対して安心・安全な食料を供給することが国の重要な使命であるとすれば、この状況を改善するために、国の補助金を投入してまず生産を支えなければなりません。他の農業生産についても同様のことが起こっています。我が国における農業という産業をどう位置付けるかという問題なのです。すべて自己責任の問題にすれば、国民への食糧の安定供給は不可能です。

 もちろん、私たち消費者自身が国産の食品をどう買い支えるかということも問われています。