漣(さざなみ)農業日記

農業によせるさざなみから自分を考える

今押し寄せる波は、さざなみなのだろうか、荒波なのだろうか。

農村での資源の活用

 農業経営は、土地(農地)、労働力、資本の3つの資源を上手に使って成り立ちます。経営者は、自分にとって一番調達しやすいものはどの資源なのかを考えなければなりません。農業経営はみんな田舎でやっているわけではありません。都市に隣接した地域では、建物に囲まれた畑で新鮮な野菜が作られ、収穫後すぐに消費者のテーブルに並ぶのですから、消費者にとって都市近郊農業はなくてはならない貴重なものです。こういう地域では土地は貴重なものですが、住んでいる人が多いので、労働力は調達しやすい資源といえます。

 しかし、一般的には農業は田舎でやるというイメージが強いものです。都市から離れた農村では、若い青年たちが村を離れ、担い手がいないということをよく耳にします。こういうところでは、労働力に比べて土地のほうが調達しやすいものといえます。土地、労働力に比べて資本については、立地条件というよりも、調達のしやすさは、経営者の能力に左右されます。能力さえあれば、借り入れや投資はそれについてきます。

 ところで、農業経営の結果とは、「規模」と「生産性」をかけあわせたものとよくいわれます。例えば、都市近郊では得られた所得を「農地規模(面積)」と「一定面積当たりの生産性(土地生産性)」に分解します。いっぽう農村では得られた所得を「労働力規模(人数)」と「労働力1人当たりの生産性(労働生産性)」に分解します。そののち、経営の結果について自分で診断します。実際には農業にはさまざまな形があって、こう単純ではありませんが基本はこういうことです。

 経営診断とは、適切な指標を選択し、実績と比較することで問題点を見つけることである。比較することによってはじめて自分の経営の強みと弱みがわかり、経営改善の手がかりをつかめる。マネジメントサイクルに的確に位置付けるためには、自己 (自己経営の計画データ)との比較が、実用的である。また外部データとの比較も、客観的な経営の強さ、弱さを判断するためには効果が大きい。(メモリー 普及活動レポートより)

 大局的に見ると、農村の人口はどんどん減っているので、政府は労働生産性を高めるため、公的な農地の中間管理機構を作って、農地の集約化を図るとともに、「スマート農業」ということばを案出し、無人で動くトラクターの開発、ドローンを利用した農薬・肥料散布、圃場の写真をとり精密な管理を行えるような技術開発などに力を入れています。(都市の近くで狭い農地を活用して自己努力で消費者に農産物を届けている農業への力の入れ方と比べるとどうなのかな?)

 私は、政府に頼っていては、今後の農業の展望は開けないと思っています。農業者個人にとって一番大切なことは、都市近郊でも農村でも人間としての信用力をつけることだと思います。農村では農地の集約化を進めるために、都市近郊では信用ある労働力を集めるためにです。それと同時に、経営者どうしの横の連携、必要に応じた組織化などが欠かせません。農業は面的な広がりの中で成り立つ職業だから、手をつなぎ合うことが絶対の条件ではないかと思っています。