漣(さざなみ)農業日記

農業によせるさざなみから自分を考える

今押し寄せる波は、さざなみなのだろうか、荒波なのだろうか。

経営診断を現場に

    現役のときは、農家の経営診断をサポートしたい、そう考えてずっと活動してきました。しかし、日常的な診断サポートの機会はほとんどありませんでした。経営改善を目指し農家に必要が生じた場合、つまり、補助事業を導入したり、資金を借りようとしたときに初めて農家の決算書を目にした場合がほとんどです。

 経営診断は日常的に経営活動に位置付けられる必要があります。そして、経営診断を行うためには、経営の実績データをつかむことが必要です。この考え方にとらわれ過ぎていました。こんなことがありました。農業経営は家族経営ですから、経営目標は家計費と大きな関係があります。診断を進めるために、農家に「家計費」を教えてもらいたいと依頼したところ、「なんでアカの他人に、一番秘密にしたいことを教えなければならないんだ」と怒鳴られました。

 経営診断は特定の専門家が行う作業ではありません。経営者だけでなく、目標や、具体的な経営対応について、経営の構成員、つまり家族の考え方をある程度一致させることが必要です。また、診断は数字がなければできないというわけでもない。ただ、考え方の筋道をしっかりさせることが大切です。そこでQC手法の一つ「連関図法」を取り上げ、普及指導員の研修で、農業現場に赴き、実践してみました。

連関図法」とは、「原因」と「結果」、「目的」と「手段」などが絡み合った問題について、その関係を論理的につないでいくことによって、問題を解明する方法である。これをグループ、農業経営でいえば、家族構成員や法人構成員の共同作業で実施する。この実践により、問題の因果関係を明確にすることができ、グループメンバーと連関図を作成してゆく過程で、メンバーのコンセンサスを得ることができる。メンバーの知恵を結集することで、発想の転換を可能にし、問題の核心を探り、解決に導く事ができる。(メモリー 普及活動レポートより)

 この方法は考え方をメンバーで整理するだけでなく、この経営について診断するためにはどのようなデータが必要かをメンバーそれぞれに認識させることができます。ここでいえば、時期別の出荷状況や雇用者の勤務状況をデータ化することは必須だといえます。

 私はこういう方法が、現場で定着すればいいなと思っています。しかし実は自分自身、実際の普及活動の中で活用したことはないのです。それは、忙しい農家にこんなことをする余裕はないと思い込んでいたからかもしれません。しかし、このように意見を出し合い、まとめるためのサポートは絶対に必要で、後輩諸君にぜひチャレンジしてもらいたいと思います。