漣(さざなみ)農業日記

農業によせるさざなみから自分を考える

今押し寄せる波は、さざなみなのだろうか、荒波なのだろうか。

変化を新しい資源としてとらえ、次の展開へ

 農業の担い手の減少の中で、10年以上前に事業化された農の雇用事業が現在も続いている。わたしたちNPO法人ちば農業支援ネットワークでは、事業を受けた経営体の調査を組織として請け負い、事業開始当初から実施している。

 今回、私が担当している経営体である株式会社PBファーム市原の大竹康之さんを紹介したい。大竹さんは現在60歳で、市原市高根地区を中心に、大規模な水稲経営と畑作経営を雇用者10名程度とともに経営している。スーパーマルエイで長く食品関係の販売を行い、平成29年に現在の会社を設立した。

 当初調査に伺ったころは、水田での水稲と畑でのキャベツ生産(外食と連携)を組み合わせた経営を行っており、大規模な機械を導入した水稲生産の収益で雇用者の労賃を確保できればいい、実際のもうけはキャベツから得る、農閑期と農繁期をつくり、農閑期には雇用者に積極的に長期休暇を進めるという「めりはり」ある経営を目指すと話されていた。

 しかし、今回うかがった話によると、経営内容は、地域の変化とともに大きく変化してきている。まず、生産物が前の二者にとどまらず、ジャガイモ、レモン、カボチャ、スイートコーン、シイタケなど多くの品目の生産に取り組むようになり、事業の幅が広がっていた。最初にもくろんでいた農繁期、農閑期のある経営から、「毎月金が入る経営」に変化してきている。第2に多くの機械を設備していることで、作業の注文がどんどん増えてきており、近隣の耕作放棄地の改善に大きく寄与している。これは農地だけでなく、工場や倉庫の除草など幅広い業種の注文を受けており、一般業者より安価に作業でき、農業という範囲にとどまらず、事業規模が拡大している。第3に社内での研修を積極的に受け入れ、人脈を利用した事業拡大を展望している。一人は調理人経験者が、PBファームで研修後、農産物の加工を行い、さらにレストランを開店するとともに、自身でも農業を始めた。また姉崎ダイコンの運搬を担当している人も研修中で、今後のコラボレーションをもくろんでいる。現在、農の雇用事業の対象となっている一人は独立就農を希望しているが、将来は機械、設備はPBファームで貸与し、生産専門の会社として独立させ、販売は共同で行うというアイデアをもっている。

 このように大竹さんは、当初持っていた考え方に固執することなく、地域や交流などのさまざまな変化をたくみに新しい資源として活用できるものとしてとらえなおし、どのような方向に経営を伸ばすかについて、柔軟に考えを展開しているのである。

 この人の奥さんもおもしろい。「また語った?」と聞く。「いいですねえ。夢があって」「誰にでも、何回でも同じ話をする。私なんか、10回以上も聞いているのよ」とくるのである。

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大竹さん