漣(さざなみ)農業日記

農業によせるさざなみから自分を考える

今押し寄せる波は、さざなみなのだろうか、荒波なのだろうか。

生産者と消費者が支える農業こそ「強い農業」

 私は今年の9月から妻が参加している生協の方たち4〜5人で行われている「輪読会」にネットで参加している。現在読んでいる本は、東大の鈴木宣弘教授が執筆した「農業消滅」というショッキングな題名の本である。

 私はこの鈴木教授については、10数年前、まだ現役で館山市に赴任していたころ、安房地区の酪農青年部が教授を呼んで講演会を行ったので、それに興味を持って参加し、とても共感したことを思い出し、もう一度勉強したいと思ったのである。
 その後、鈴木氏はTPP問題に反対の論陣を張り、鉢巻をしてデモにまで加わった姿を見て、論理性と行動が一致した学者として深く心に刻まれていた。

 その生協が11月に鈴木教授の講演会を千葉市で計画したので参加したところ、交通機関の関係で教授は40分も遅刻してきた。そのため、十分な話を聞くことが出来なかった。しかし、後日視聴者限定で内容をユーチューブにアップしてくれたので、それを昨日自宅で視聴した。その中でたった一つ10数年前の講演でも話していた印象深い話を再度話していたので、ここに紹介する。

 スイスの卵は国産1個60〜80円もする。輸入品の何倍もしても、それでも国産の卵のほうが売れていた。小学生くらいの女の子が買っていたので、聞いた人がいた。その子は「これを買うことで生産者の皆さんの生活も支えられ、そのおかげで私たちの生活も支えられるのだから、当たり前でしょう」といとも簡単に答えたという。国産の卵は高いのではなく、そこに込められた価値(ナチュラル、オーガニック、動物福祉、生物多様性、美しい景観)を皆で支えていきたいというのである。

 生産者が生産者だけの方向性をめざし、消費者が消費生活だけを目指しているのではアカンのである。生産者と消費者が支え合うことでこそ「強い農業」ができるであろうし、消費者の生活も豊かになると思う。鈴木宣弘さんは具体的に「ローカルフード保全法」の確立に動き始めている。これからの動きが注目される。